副腎腫瘍

副腎に発生する腫瘍の多くは良性腫瘍で、他の臓器やリンパ節に転移することはありません。ただ、からだに不可欠なホルモンを産生・分泌する、という副腎本来のはたらきをもった腫瘍(腺腫)ができると、過剰なホルモン量が体内に分泌されます。

良性腫瘍

  • クッシング症候群
    副腎の腺腫がコルチゾールというホルモンを過剰分泌することで、肥満や脱毛、挫創(にきび)、筋力低下などが症状として現れます。血中のホルモンを測定する検査や画像検査によって診断し、手術によって症状は改善します。
  • 原発性アルドステロン症
    副腎の腺腫がアルドステロンというホルモンを過剰に分泌し、高血圧や体内のミネラルバランスが崩れる、といった状態が引き起こされます。他の腫瘍に比べ、比較的小さな腺腫でも症状が現れやすく、血液検査や画像検査に加え、血管カテーテル検査によって原因となっている腺腫が右か左か判定され、手術が必要となります。
  • 褐色細胞腫
    副腎の中央(髄質、ずいしつ)にできた腫瘍がカテコールアミンというホルモンを過剰に分泌することで、糖尿病や高血圧、頭痛、動悸、発汗などの多彩な症状を呈します。血液検査と画像検査が行われ、手術によって治療します。少数ですが一部に悪性、両側性、家族性などが報告されています。
  • 非機能性腺腫
    副腎に発生した腺腫のうち、ホルモンを分泌していない腺腫のことを非機能性腺腫とよび、約半数がこれにあたります。副腎骨髄脂肪腫もこれにあたります。症状がない副腎腫瘍のうち、ホルモンを産生しても症状として出現していない状態はサブクリニカルとよばれ、後に手術が必要となる場合があります。非機能性か、サブクリニカルかを判定するために血液や尿の検査、画像検査を実施します。非機能性腺腫と診断されれば手術は必要ありません。

治療

  1. 手術療法
    ホルモン産生腫瘍は、転移をしない良性腫瘍であっても手術が必要となります。ホルモンを過剰に分泌する代表的な疾患として、クッシング症候群、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫が重要です。ホルモンを分泌しない腺腫は、非機能性腺腫とよばれ、必ずしも手術を必要とはしません。ただし、4-5cmを超える大きな腫瘍の場合には、手術をお勧めすることがあります。

悪性腫瘍

  • 副腎がん
    まれですが、副腎に癌が発生することがあります。腫瘍が大きいほど悪性の可能性が高いといわれています。希少であることから手術以外で特に有効とされている治療が確立されていないのが現状です。発見時に既に手術が困難なほど大きくなっていたり、転移したりしている場合があります。
  • 転移性副腎腫瘍
    他の臓器にできた悪性腫瘍が、副腎に転移した状態です。病状によって手術を勧められることもありますが、通常は転移を伴う悪性腫瘍の場合、化学療法などの全身療法が中心となります。