診療分野
疾患別分類
腎不全
当科では、腎不全治療としてバスキュラーアクセスの作成、PD(腹膜透析)カテーテルの留置や抜去、腎不全に対する唯一の根治的治療である腎移植(生体・献腎)を実施しております。
2022年4月には献腎移植、同年5月には生体腎移植を実施し、当科の腎移植医療が再開されました。
血液透析は血液浄化治療部のメンバーとして、また地域医療支援として積極的に関わっております。
生体腎移植や献腎登録・更新ではいつもお世話になっておりますが、腎移植に興味がある(話を聞いてみたい)患者さん、腎移植を希望される患者さんがおられましたら、いつでもご連絡ください。
生体腎移植は術前検査やコンディショニング、B型肝炎などのワクチン接種など、準備に約半年ほどかかります。
CKD G3b~4程度でお越し頂けましたら、余裕をもって透析導入前の腎移植(先行的腎移植、PEKT)が実施できますので、PEKTを希望される方がおられましたらどうぞよろしくお願い申し上げます。
悪性腫瘍
当科では手術、薬物療法、放射線療法などを組み合わせた集学的治療に取り組んでおります。
手術はdaVinci Xiによるロボット支援手術、腹腔鏡手術、経皮的手術、経尿道的手術、腎移植に代表される開腹手術など、すべてをカバーしております。
薬物療法は抗がん剤や分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤のほか、前立腺癌に対する新規AR標的薬(ARAT製剤)にも対応しております。
免疫関連有害事象(irAE)をはじめ、薬剤の副作用にも他の診療科と協力して対応します。
膀胱がんの経尿道的手術後に実施する抗がん剤膀胱内注入や、BCG膀胱内注入療法にも対応しております。
その他、前立腺がんに対する小線源療法やスペーサー留置といった放射線療法、病院として緩和ケアチーム・緩和ケア病棟にも対応しておりますので、何でもご相談頂けましたら幸甚です。
尿路結石
当科では、尿路結石に対してESWL、TUL(semi-rigid、flexible)、PCNL、ECIRS(TAP)を実施しています。
砕石デバイスはHo:YAGレーザーを使用し、すべての尿路結石に対応しています。
PCNL、ECIRSについては、直径0.65mmのHDIGスコープを用いた直視下穿刺、続けて世界最小径の4.8Frで経皮的な砕石が可能であり、低侵襲な経皮的手術を実践しております。
反復性尿路結石症の方では、蓄尿によるアミノ酸解析や生化学・免疫学的検査によって、再発予防のための薬物療法を行っております。
是非、結石の患者さんがいらっしゃいましたら、ご紹介ください。
排尿障害(BPHなど)
前立腺肥大症についてはHo:YAGレーザーを用いて経尿道的レーザー前立腺核出術(HoLEP)を実施しており、年間47件(令和3年)で実施件数は増加傾向にあります。
手技や成績も安定しており、満足度も高い手術です。
前立腺肥大症の再発例や前立腺癌による排尿障害に対しては、古典的に経尿道的前立腺切除術TURPで対応しております。
100mLを超える超高度の前立腺肥大症に対してもHoLEPを実施しており、抗血小板薬や抗凝固薬を継続しながらの手術も実施が可能です。
膀胱憩室の合併例では同時切除/焼灼も実施しております。
是非、ご紹介をよろしくお願い致します。
尿路性器感染症
感染症は、病態や耐性菌の現状を踏まえた治療を実施しております。
抗菌薬の選択、外科的介入の種類やタイミングを踏まえ、救命を第一とした治療を実施しております。
複雑性尿路感染症では感染症に加えて原疾患の治療を、致死的な重症感染症に対しては局所および全身のマネジメントを、耐性菌に対してはグローバル・ローカルな傾向に基づいた薬剤選択を実施します。
現在、尿路性器感染症で問題になっている薬剤耐性は、大腸菌(キノロン耐性株、ESBL産生株)、淋菌(アジスロマイシン耐性株、セフトリアキソン耐性株)、Mycoplasma genitalium(キノロン耐性株、マクロライド耐性株、テトラサイクリン耐性株、多剤耐性株)です。
また、梅毒が全国的に増加傾向にあり、持続性ペニシリン製剤の(商品名:ステルイズ)の使用が可能になったこともあり、注目すべき疾患といえます。
病態や薬剤感受性が問題となる患者さんがおられましたら、ご一報頂きますようお願い申し上げます。
男性不妊症
令和4年4月から、不妊症治療の一部が保険診療となりました。
当科では、これまで自費で実施していた不妊診療の一部を、医療保険に基づき、保険診療として実施致します。
島根県は全国平均(1.33、2020年)と比較して高い(1.60)とされていますが、本邦の少子化の現状を鑑み、積極的に不妊治療を行っております。
精巣内精子採取術、顕微鏡的精巣内精子採取術をはじめ、精索静脈瘤に対する低位・高位結紮術、カウンセリングや各種薬物療法に対応しております。
その他
女性泌尿器科領域の骨盤臓器脱や尿失禁にも、内科的・外科的なアプローチで対応しております。お困りな患者さんがおられましたら、ご紹介ください。
性同一性障害については、現状ではホルモン補充療法を中心に対応しており、性別適合手術(Sex reassignment surgery、SRS)は実施しておりません。精神科や形成外科、婦人科等と連携し、将来的にはSRSにも対応したいと考えています。
外科的治療
ロボット支援手術
当院では、年間100件超のロボット支援手術を実施しており、前立腺がん、腎がん、膀胱がんに対してロボット手術を実施して参りました。
ロボット支援腹腔鏡下腎盂形成術も開始し、保険適用の拡大に伴ってますますの増加を見込んでおります。
ロボット支援手術推進センターを中心として診療科横断的な活動も実施し、特に医療安全の面では相互の見学システムや、術式別ロボット支援手術の中止基準の策定・共有などを行っております。
より安全な手術を、安心して島根県民の方々に受けて頂けるよう、引き続き努力して参りますので、ご紹介をよろしくお願い致します。
現在当科で実施している手術は以下の通りです。
- ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術
- ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術
- ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術
- ロボット支援腹腔鏡下腎盂形成術
腹腔鏡手術
当科で実施している腹腔鏡手術は、副腎腫瘍の対する腹腔鏡下副腎摘除術、腎がんに対する腹腔鏡下根治的腎摘除術、上部尿路上皮がんに対する腹腔鏡下腎尿管全摘除術、腹腔鏡下尿膜管摘除術、腹腔鏡下精巣静脈高位結紮術、
などを実施しております。
また、腹膜透析カテーテル(PDカテーテル)を腹腔鏡下に留置・交換し、低侵襲、安全性を第一とした医療を実施しております。
腎移植
島根大学医学部附属病院に設置されておりました、腎移植センターの活動が令和3年9月から再開されました。コロナ禍の影響はまだまだ続きそうですが、「腎不全医療に待ったなし」の状況です。予定手術である生体腎移植も再開しておりますが、心停止および脳死下腎移植も院内の準備は整っております。院内には多数のドナーコーディネーターと、1名の腎移植レシピエントコーディネーターも在籍しております。
生体移植
ドナー・レシピエントお二人の受診ののち、問診と採血・検尿をしてドナー要件を満たしているようであれば、HLAやクロスマッチ検査を実施します。問題ないようなら全身精査を進めながら、レシピエントのB型肝炎等のワクチン接種を行います。初診から移植までは半年前後を見積もって頂く必要がありますが、Pre-emptive移植(透析導入前の腎移植)の場合には、早ければ3〜4か月で実施できる可能性もあります。
献腎移植
献腎登録を目的とした受診時には、問診と一通りの全身精査を行います。現在の平均待機時間は約15年で、16歳以上に限ると16年あまりと算出されています。従って登録時の年齢や全身状態によっては、登録しない方向で話を進めさせて頂く場合もあります。登録後の待機中は年に1回の更新に受診頂きますが、60歳以上となりましたら合併症等にも注意しながらの更新となり、レシピエント候補の順位がついた際に残念ながら腎移植できないであろうと予想される条件であれば、更新されないような説明をさせて頂く場合もあります。
腎移植は、ドナーの崇高なお気持ちを尊重し、レシピエントの人生を変えうる治療であり、医療費の削減という社会的役割も高い医療です。島根県内で唯一の腎移植実施施設として責任を持って対応致しますので、どうぞ気軽にお問い合わせください。
経尿道的・尿路内視鏡手術
当科では古典的・基本的な経尿道的内視鏡手術とともに、高度な手術手技を取り入れた診療を実施しております。
上部尿路内視鏡手術
TUL
上部尿路、膀胱結石に対する経尿道的手術を実施しており、ESWLで不十分な症例、比較的大きな腎結石、
尿管のトラブル症例などにもTULを積極的に実施しております。
PCNL
大きな腎結石や、逆行性にアプローチできない症例では、経皮的手術であるPCNL、TULと組み合わせたECIRSにも対応しております。
超細径内視鏡を用いた直視下穿刺、それに続く最小4.8Frシースを用いた砕石は、確実で低侵襲な治療を実現しております。
小児例やTUL困難例など、いつでもご紹介ください。
UTUC-ablation
上部尿路上皮がんの標準治療は腎尿管全摘ですが、欧米では上部尿路上皮がんに対する内視鏡治療が、低リスク腫瘍の約2割まで増加しております。
ガイドラインでも提示することが強く勧められており、腎温存手術は腎不全症例の減少にもつながります。
上部尿路上皮がんが疑われる方に対し、当科では原則として全員に腎盂尿管鏡検査で組織を確認し、
低リスクの上部尿路上皮がんと診断したら内視鏡手術も提示しています。
説明と同意が得られればHo:YAGレーザー、Nd:YAGレーザーを用い、腫瘍を蒸散する治療を実施しております。
術後は3か月おきに入院して頂き、全身麻酔下にフォローの内視鏡検査を実施しますので、そのことにご理解を頂けた方々に実施しております。
特に単腎、腎機能低下、高度の合併症を有するような方々に対しては、選択的な腎温存治療も実施しております。
是非、ご相談ください。
下部尿路内視鏡手術
HoLEP
前立腺肥大症で手術が必要な方々に対しては、HoLEPを実施しております。
合併症の状態にもよりますが、基本的に抗血小板薬や抗凝固薬を継続しながら手術が可能です。
薬物療法で症状の改善が不十分、手術による内服薬の削減を希望される方々など、いらっしゃいましたらご紹介をよろしくお願い致します。
TURBT
膀胱がんに対して最初に実施する手術ですが、当科ではALA-PDDを積極的に使用して、可能な限り少ない回数での治療を実践しています。
術後は進行性膀胱がんであれば膀胱全摘、補助化学療法、非浸潤がんであれば抗がん剤やBCG膀胱内注入療法を実施します。
ESWL
当科ではほぼすべての結石治療に対応しており、ESWLも年間30セッション程度実施しております。
症例に応じ、中心的治療として、また、内視鏡手術の補助的手術としても実施しております。
自然な排石が困難な方々や、外来治療を希望される方々など、いらっしゃいましたらご紹介ください。
人工尿道括約筋埋没術
前立腺肥大症や前立腺がんの対する手術後の尿失禁に対して、人工尿道括約筋植込・置換術(K823-5)を当院でも積極的に施行しております。
骨盤底筋体操や薬物療法の効果が不十分で、尿失禁のために外出や旅行などを控えている方がいらっしゃいましたら、いつでもご紹介をよろしくお願い申し上げます。
尿路変更(変向)
当科では一般的な腎瘻や膀胱瘻はもちろんのこと、尿路変更は尿管皮膚瘻、回腸導管、回腸新膀胱を造設しております。
ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘の際には、体腔外で回腸を利用した尿路変更(ECUD)を実施しています。
ボトックス膀胱壁内注入療法
過活動膀胱、脊髄損傷による神経因性膀胱に対しては、ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法を実施しています。
いずれの対象疾患に対しても、現在は原則として入院で実施しております。
薬物療法に抵抗性の過活動膀胱、薬物の内服ができない症例、神経因性膀胱の方がいらっしゃいましたらご紹介ください。
間質性膀胱炎に対するDMSO膀胱内注入療法
当院では間質性膀胱炎(IC)に対するハンナ型潰瘍の焼灼、水圧拡張だけでなく、新たに保険適用となったDMSOの膀胱内注入療法にも対応しております。ICを疑うような症状(頻尿や蓄尿時の下腹部痛、尿意切迫、膀胱や尿道痛など)に苦しんでいる患者さんがいらっしゃいましたら、ご紹介ください。
男性不妊症
当院では男性不妊に対する検査・治療を2021年8月より再開いたしました。
乏精子症に対する薬物治療、無精子症に対する精巣内精子回収術(TESE)や顕微鏡下精巣内精子回収術(MD-TESE)、精索静脈瘤に対する腹腔鏡下高位結紮術や顕微鏡下低位結紮術、などに対応可能です。
毎週金曜日に専門外来を設けておりますのでご相談いただければ幸いです。