腎不全

腎臓は体内の水分、ミネラルを一定に保つはたらきのほか、赤血球をつくるホルモン(エリスロポエチン)や骨の破壊と形成(骨代謝)にはたらくビタミンDを産生します。

そのため、腎臓の機能が低下している慢性腎臓病(CKD、シーケーディー)の状態になると、水分やたんぱく質、塩分などのミネラル制限が必要となり、ホルモンの補充も必要となります。

CKDが進行すると腎不全、すなわち腎臓がほとんど働かない状態となり、そのかわりとなる治療(腎代替療法)が生命維持に不可欠となります。腎代替療法には血液透析、腹膜透析、腎移植があり、根本的な治療は腎移植しかありません。

腎臓の機能低下や持続する蛋白尿といった慢性腎臓病(CKD、シーケーディー)に対する治療を実施しても腎不全の状態になった場合、以下の腎代替療法(じんだいたいりょうほう)を実施する必要があります。詳細は表に示す通りですが、島根大学ではすべての治療に泌尿器科が関与しています。腎代替療法を行っている方は身体障害者1級に認定され、ほとんどの治療費は公費から拠出されます。

①血液透析(HD)②腹膜透析(CAPD)③腎臓移植
(生体・献腎)
通院回数週に3回月に1回1~3か月に1回
免疫抑制剤不要不要不可欠
食事・水分制限多いやや多い少ない
旅行・出張・
スポーツ
制限あり制限あり自由
出 産極めて難しい極めて難しい薬の調整で可能
小児の成長(身長)成長障害成長障害期待できる
社会復帰率中程度やや高い高い
その他の利点最も確立した腎不全医療法血液透析に比べ自由度が高い
  • 生体腎移植で血液型の違いはクリアできる
  • 透析からの解放感

血液透析の場合、主にバスキュラーアクセスと呼ばれる透析用の血管を作成する手術、週3回の維持透析の管理を行います。バスキュラーアクセスで最も多いのは腕や手首の動脈と静脈をつなぎ、静脈を発達させて針を刺すための血管とする内シャントを造設します。

腹膜透析の場合、腹膜の中(腹腔内(ふくくうない))に透析液を出し入れできるカテーテルを設置し、場所が悪い場合や他の腎代替療法に移行した場合には位置を調整したり、抜いたりする手術を行っています。

腎移植は腎不全に対する唯一の根治的(こんちてき)治療で、親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)から腎臓の提供をうける生体腎移植と、心臓死・脳死ドナー(提供者)から腎臓の提供を受ける献腎移植があります。腎移植にかかる検査や手術費用はほとんど公費(小児は育成医療、成人は更生医療)から拠出されるため、自己負担は個室にかかる費用や入院中の食費が中心となります。腎移植後は免疫抑制剤という薬を飲む必要がありますが、旅行やスポーツが可能となり、女性では妊娠出産、小児では成長(第二次性徴前であれば身長が伸びる)が期待できます。移植した腎臓は平均して約20年機能し、透析に比べ医療費の削減にもなるといわれています。

  • 生体腎移植の場合、提供するドナーの条件(年齢、体格、腎機能、基礎疾患など)がクリアされていれば、血液型が異なっていても腎移植は可能です。
  • 献腎移植の場合には日本臓器移植ネットワークに登録し、現時点では成人の場合約16年で腎移植が受けられます。登録時には登録料と検査料合わせて5万4千円、毎年の更新時には5千円が必要となります。

腎移植

腎移植
腎移植

腎移植は腎不全に対する唯一の根治的(こんちてき)治療です。親族の生体腎移植と、心臓死・脳死ドナーからの献腎移植があります。

生体腎移植ドナーの手術は、手術歴などの条件が整っていれば体腔鏡(たいくうきょう、内視鏡)を用いて小さな傷で腎臓を摘出する「後腹膜鏡下ドナー腎採取術」を行い、開腹手術による腎臓の摘出を行う場合もあります。後腹膜鏡下ドナー腎採取術でできる創(傷)は、5〜12mmの創が脇腹に3〜4か所、下腹部に腎臓を取り出すための約6cmの創が1か所となります。手術時間は約3時間、出血量は50mL以下の予定です。入院期間は7〜10日の予定です。

ドナーから摘出された腎臓はレシピエントの部屋に慎重に運搬し、動脈から保護液を流し、レシピエントに移植するための準備作業を行います。

腎臓の提供を受けるレシピエントの手術は、通常下腹部を15~20cm開腹してドナーから提供された腎臓を移植します。動脈と静脈を吻合(ふんごう、つなぐこと)し、血流を再開して早ければ10分以内に初尿(しょにょう、レシピエントの血液からつくられた初めての尿)が確認されます。尿管と膀胱を吻合し、手術を修了します。手術時間は約6時間、出血量は200mL未満の見込みです。入院期間はレシピエントにもよりますが、腎移植前1〜2週前に入院して頂き、多くは腎移植後3〜4週で退院となります。